東京高等裁判所 昭和42年(ツ)81号 判決
ところで、仮登記は仮登記以後に当該不動産について登記簿上の利害関係人となることあるべき第三者に対して、自己の持つ将来の物権変動請求権の順位を保全するものであり、したがつて、将来当該不動産について物権変動が予定される右被保全請求権は、特定されたものと謂うべく、右請求権についてそれを限定する何んらかの付款(条件)がつけられており且つその旨登記簿上に公示されている以上、仮登記以後に登記簿上の利害関係人となつた第三者は、厳密に登記簿上に記載されている被保全請求権に基づく本登記についてのみ上記仮登記の効力に服すべく、仮登記表示の物権変動請求権と現実に発生した請求権とが異なる場合は勿論、仮登記表示の被保全権利について後日その内容、条件等につき、当事者(右請求権の債権者、債務者)間で第三者の利害に影響を生ずべき何んらかの変更を加えた場合においても利害関係人となつた第三者に対してはその変更後の事項による権利変動による不動産登記法第七条第二項所定の効力を対抗できないものといわなければならない。
本件記録によれば、本件仮登記に「昭和三十三年七月六日までに埼玉県知事の許可ありたるときは所有権を移転するものとする」との条件が表示されていること、被上告人が、本件土地について、昭和四十年五月二十四日、強制競売申立登記を経由していること、上告人(仮登記権利者)が上記期限を徒過した後である昭和四十一年十月二十九日に埼玉県知事の許可を得、これを理由に被上告人に対して、上記仮登記に基づく本登記申請のための承諾を求めているものであること、いずれも当事者間に争いのない事実であることができる。したがつて、本件仮登記に表示されている県知事の許可についての期限が徒過され、後日に至つて、上告人と本件仮登記義務者である小沢との間で、本件和解が成立し、上記期限後もなお本件仮登記の被保全請求権を維持する旨の合意をみ、上告人は右合意に基づいて上記県知事の許可を得たものであるから、上記説示のとおり、第三者である被上告人は、上告人の本件本登記の請求権(登記請求権)が、停止条件の期限を変更する前の仮登記によつて保全された請求権(実体法上の請求権)に基づくものであることを否定し得るものと謂わなければならない。
(毛利野 石田哲 矢崎)